飯能住まい [ 巡り巡って出会えた、理想の土地と住まい ]

飯能住まい、半農ライフ、農のある暮らし
小川夫妻との出会いは、新築の住まいを建てるのにアンティークのドアが使いたいと店に相談へ来てくれたことがはじまり。

くわしく話を聞いていくと、設計図面はだいたいできているが建て始めるのはまだ半年以上先のことになる、とのこと。住まいに似合う古建具を用意していく期間もあったので、図面を預かり一ヶ所ずつ似合ったものを見つけていくことにした。
インテリア家具,アーコールチェアとイギリスビンテージのダイニングテーブル
そのあいだ何度か打ち合わせを重ね、これから先使い続けていきたい家具のことや、インテリアの話も気が合い、これからできあがる住まいを想像しながら、おふたりが好きと思える理想のインテリアをいっしょに考えていった。
飯能市下畑の農のある暮らし。
住まいを建てた場所は飯能市下畑。飯能市がすすめている“農のある暮らし”の制度で出会った土地だ。“農のある暮らし”は移住者に向けて、自然の中で農にふれながら気持ちの豊かさを育み、仕事と暮らしの楽しみを両立させていく制度。飯能市に広がる農地の一部を宅地に変更して家を建てるので、ロケーションも最高だ。

東京都青梅市出身のおふたりは結婚後賃貸に暮らしていたが、ご主人の和哉さんは将来的には自分の家がほしいとずっと思い描いていた。じかんがあるときには中古物件情報などを見て、気になった物件は夫婦で見にいった。もともと古い家をリノベーションして住まいにしたいと希望を持っていたが、なかなかピンとくる物件と出会うことができなかった。

奥さまの奈都美さんは、和哉さんの家がほしいはやる気持ちに対して、冷静に住みやすさや快適性の面でアドバイスをした。古い家のリノベーションより、マンションリノベの方が暮らしている想像がしやすかったが、庭のある暮らしには馴染みがあったので、和哉さんの気持ちを優先していっしょに住まい探しを楽しんだ。

最初は青梅市やあきる野市で中古物件を探していたが、環境が似ている飯能でも物件を探すように。飯能市が管理している空き家バンクに掲載されていた中古物件がさっそく目に留まった。内見するために飯能市役所へ話を聞きにいくと、先に検討している方がいてしばらくして契約が決まってしまった。そのときに市役所の方からはじめて農のある暮らしの制度を教えてもらった。
農のある暮らしの対象地域は環境がすごくよかったので、そこではじめて自分たちの気に入った住まいづくりを新築でしていくのもいいのではないか、と思えるようになった。土地は広くても、家はそんなに大きくなくていい、それが理想と思っていた。それからあせらず気長に1年半、ふたりがここだね、と一致した土地と出会え、その日に即決。

家を建てるにあたり、和哉さんが手書きした理想の住まいを仕事で交流のある工務店mop topさんが図面におこしてくれた。

リノベーションが叶わなかった分、新築で使う建具は味わいを感じる木製のものにしたいと思っていた。そこで飯能にあるアンティークショップREFACTORY antiquesに相談することにした。気長に探していた理想の土地と、思い描いていた理想の住まいがこのときようやく一致した。

そのほか思い描いていた理想のひとつに、古材の梁を使いたいと思っていた。その希望をmop topさんに相談したところ、たまたま家を建てる予定の地域にあった古い家屋を解体したときに取っておいた梁を見せてもらい、縁を感じてそれを使わせてもらうことにした。希望を快く受けてくれ理解をもって工事をすすめてもらったおかげで、より望ましい家にすることができた。

家が完成して1年。今の暮らしぶりの様子をうかがいに2021年の7月、久しぶりに小川邸に再訪した。 家が完成したときにはなかった表札、家の裏の薪小屋、内装の塗装は、ふたりでコツコツ手をかけて完成させた。
DIYしてつくった薪棚。
塗装の仕事をしている和哉さんは、会社にあった昔の足場を植物の台にしたり、薪割りの道具の下に養生シートが敷かれたり、人となりが感じられる個性に魅力を感じた。


住む前から家のまわりは雑草がすごかった。せっかく家を建てて手のかかる頃だから、仕事が忙しいと生活が楽しめないと思い、奈都美さんは近くの職場へ転職した。
アンティーク食器棚
今では仮払い機も上手に使いこなし、土地の境界近くはご近所さん同士お互いに刈りあう仲に。

最後に、ここに引っ越してきて一番なにがよかったことですか?と聞いてみた。

「自然が近くにあることがいちばん気に入っています。目覚めたときに目の前に緑が広がっていて気持ちがいい。引っ越してきたばかりの頃は、山に旅行に来てるんじゃないかと錯覚していました。」

「雨が降ればカエルが鳴いて、季節季節で変化する虫や鳥の鳴き声が暮らしを心地良くしてくれます。」と、共感しながら話をする小川夫妻が印象的だった。
アンティークドアをリノベーション
味わいのある建具を取り入れたことで、新築で建てた家もよそよそしくなく、すでに暮らしに溶け込み、親しみを与えていた。

元梅農家さんだったこの土地を活かし、植えてあった梅の木をシンボルツリーとして残すことにした。夏の終わりから庭づくりも進めて、畑や植栽も楽しみたいと小川さん。巡り巡って手に入れた理想の住まいは、これから暮らしに手を入れる楽しみがいっぱい詰まっている。