「時をつむぐ」
和紙のことを知るきっかけになったのは、古い照明に使われている和紙の貼り替えを加茂さんにお願いしたことがはじまりです。
話をうかがうと原料の楮(コウゾ)を庭で育て、紙漉きをするまで一通りの作業を自宅のアトリエでしていることを知りました。
加茂さんは舞台の装飾などをおこなう和紙造形アーティスト。和紙のことを多くの人に知ってもらいたいと思いシェアアトリエAKAI FACTORYにも所属して、和紙を活かした身近な生活道具やアクセサリーなどの展示販売もしています。
和紙漉きまですべての工程をアトリエでするのは、「和紙づくりをする段階で制作は始まっている」と加茂さんは話します。楮をほぐす細かさや漉く厚みなど塩梅をみながら調整して、目指す作品のイメージに近づけていきます。
藍染め工房壺草苑さんからも和紙を藍染めしてみたいとリクエストをいただき、紙を漉く前の段階の楮や、和紙になった状態のものを藍染めする機会の橋渡しをさせてもらいました。
様々な濃さで染まる和紙を見て、古道具にある襤褸(ランル)が思い浮かびました。加茂さんは制作で出た和紙の端切れを捨てずに貯め、そのままの状態で再利用したり、溶かしてまた漉き直すようなこともしています。
限られた貴重な藍染め和紙を見て、できるだけ余さずに使いたい、そんな想いから今企画展で制作する作品づくりがスタートしました。
淡くて深い時間の経過の重なり、透かして見える楮の繊維、身近なものほど素材の魅力は直接伝わってきます。自然が織りなす自然な景色。ぜひ身近に感じてください。