梅雨時の過ごし方をテーマにした企画展が6月19日(土)からREFACTORY antiquesでスタートしました。今回打ち合わせを重ねて用意したアイテムは完売しましたので終了させていただきます。

硝子、和紙、草花が豊かな梅雨じかんを過ごす心のお供になっていったらうれしいです。

企画展を開催するときは、作品とともにそれぞれの暮らし、作品づくりの背景も伝わるようにしています。すべてを一続きに知ることで、作品の見え方に奥行きを与えてくれるからです。

2020年に飯能へ移住してきた硝子作家の山﨑さん。築100年経つ古民家をリノベーションして、里山での暮らしと作家活動を両立させています。その生き方や背景も取材してまとめましたので、移住や作品づくりについて興味のきっかけにぜひご覧ください。
今回の梅雨にまつわる企画展は「手紙」「夏の準備」「庭仕事」「読書」と4つのテーマを設けました。

「手紙」では、書く行為を再認識する思いから、文字を書きたくなる気持ちを大切にしたかったことと、手紙自体を贈り物のような感覚で使えるものにしたいと思い、デザインを考えてきました。

短い文章でも、硝子ペンのような筆記具を使うには、丁寧な場づくりから始まります。そこに季節の草花を飾れば、きっと今過ごしているじかんも相手に届くように思います。

封筒は、便箋を和紙で包んで帯で封をするデザインに。それはまるで贈り物を包むような所作。

便箋は和紙のなかでも滲みの味が程良く出るものを、原料の特性を理解するところから始めました。

飯能から車で40分程度のところに、和紙の産地として有名な小川町があります。企画展に参加してくれた和紙造形アーティスト加茂孝子さんは、小川町で和紙を学び独立しました。

昔から残る工房や組合を案内してもらい、和紙に対するより深い理解をすることができました。

印象的だったのは、いろんな種類の和紙を説明してくれた協同組合の番頭さん。これはセキネさんが漉いて持ってきた和紙だね、これはウチムラさん。当時やり取りした記憶も蘇る和紙は、人の顔と手が見えるんだなと、ふだん何気なく使っている紙に対する意識からは想像できないことでした。

封筒とセットにさせてもらった便箋は、1枚1枚手で漉いた雁皮(ガンピ)紙を用いました。

和紙の主な原料は、楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)、パルプなどです。その含有量で書き味も変わってくるのですが、繊維の細かさや長さで滲みの加減が変わります。雁皮は繊維が細かく、滲みが少なくガラスペンのインクと相性がよかったので、便箋の紙で使うことに。

大人になって必要に迫られ学んだことは、心身に染み入ってきます。もっと早くに興味を持ちたかったと思いましたし、伝統文化を見直すきっかけに活かしていきたいと取り組むことができました。

「夏の準備」では、夏の風物詩である風鈴をオブジェのように窓辺に飾って、友人や家族と過ごすじかんのアクセントになるように考えました。

思い入れのあるものは、毎年その時のことを思い起こすきっかけになります。暮らしに取り入れるものは、何かしら縁のあるものであってほしいなと思います。

風鈴のガラスは山﨑さんに、風受けは加茂さんに、あらたな関わり合いを大切にして打ち合せを重ねました。

お互いがお互いのことを知り、お互いがお互いの素材を知る。向き合うものがちがくても、向き合う姿勢は同じです。インスピレーションは、雑談のふとしたとき生まれてきます。

交流があらたな地で心地よい居場所づくりの広がりになってほしいと思います。

「庭仕事」では、梅雨時に車で町を走っていると、暑すぎないちょうど良い日に雑草の整理をしている風景をよく見かけます。植物が瑞々しく精いっぱい成長するのも梅雨じかん。

手入れに追われて気持ちがいっぱいになることもあるけれど、少しだけでも剪定した中からお気に入りを見つけてみる。それらを暮らしに取り入れてみれば、家を覆うなんでもない雑草も、季節感を感じる愛おしい表情が見えてきます。

赤く実が色づいたジューンベリーは、あっという間に鳥たちが食べてしまうけど、すべて食べられてしまう前に、分け合うことも自然との関係をたのしむ暮らしへの取り入れ方なのかもしれません。

そんな情緒がインテリアで感じられる梅雨じかんは、心穏やかに過ごすことができそうです。

盛んな夏がくる前に、気に留めて買った本を読む「読書」も梅雨じかんの楽しみです。

そんなとき、手元にある栞をこだわりの自然素材でつくりノベルティにしました。

楮から生まれた和紙と、山葡萄。昔から暮らしに取り入れられてきた自然素材の良さは、触れることでよりその良さを感じとることができます。

和紙は加茂さんの作品づくりで出た端材を、

山葡萄は飯能在住の山葡萄細工を紹介するブランドorioriの今泉さんから端材を提供してもらいました。

アンティークショップで開催するにあたり、参加者へアイデアづくりのきっかけとしてお願いした裏テーマは循環。

硝子では思い通りにならなかったパーツを硝子ペン置きやオーナメントに、作品づくりで余った和紙は栞に、


草花はドライにして和紙に混ぜフラワーペーパーになりました。
雨が降っていても心地よい企画展。ゆっくりとしたじかんの流れの中で音を聴き、心地をたしかめ、光を通した素材の質感を心に入れる余暇。

準備を進めるにあたり、多くの方に協力してもらいました。それぞれが自立して活動しながらも、ときに集まりひとつのことを形にする。それは個の力ではできなかったあらたな楽しみを生むエネルギーです。

その積み重ねが皆さまの暮らしにあらたな楽しみをつくり、地域の活性に繋がる大きな輪になっていくことを願っています。
季を想い 節を書く
硝子 | 山﨑 翔子
和紙 | 加茂 孝子
草花 | 下山 里奈
山葡萄 | 今泉 尋之
縫製 | 辻村 真理子
映像 | 小松 友哉
映像補助 | 新井 友馨
出演協力 | 尾近 亜季
撮影協力 | 松村 敏行
ありがとうございました。
REFACTORY antiques
店主 渡邉優太